つなブログ

日々の記録です

お家でソビエト気分

ロシアへの興奮が冷めない。寝ても覚めてもロシアのことを想ってしまう。

キリル文字ウォッカボルシチ… 私の頭はロシアで埋め尽くされている。

決めた。今週はロシアウィークだ。ハロウィンのお祭り気分のようにロシアグッズを飾り、ロシア料理を作ってお祝いしたい。

旅路

ロシアへの思いが爆発した私は、ついに先月サンクトペテルブルクへの旅立ちを決意した。 出発が待ちきれず、カレンダーを見ながら日付を数える毎日。修学旅行前の胸の高鳴りに錯覚した私は、修学旅行風の旅のしおりを作ったのであった。詳しくは過去の記事を読んで欲しい。

kizushi.hatenablog.com

ロシアへの道のりは遠い。旅行代理店に間違ったチケットを発券され、電話はつながらず、挙句の果てに関空が崩壊するなど数多の困難が待ち受けていた。

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やっとの思いで出国し、絶望的に何もないウラジオストク空港で、絶望的にまずいチーズを食べ、見知らぬおばさんと会話した。

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旅費を抑えるためロシアのLCCを使い、ハッピーセットみたいな箱に入った宇宙食みたいな機内食を食べた。あの味も、今となっては懐かしい。

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長い道のりで到着したサンクトペテルブルク。そこで食べたボルシチペリメニビーフストロガノフの味は一生忘れないだろう。

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美しい宮殿の数々に魅了され、深い深いメトロにも挑戦した。全てが新鮮で、印象的な旅となった。

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部屋をロシアに染めよう

そんなロシアだが、一回行くだけでは物足りない。あの手この手を駆使し、自宅でもロシア気分を味わいたい。 例えば入浴剤「草津」や「別府」を入れるだけで、なんとなく草津や別府に行った気分になるのだから、家にロシア要素を取り入れることで、ロシア生活を送れるはずだ。

1. 飾ろう! マトリョーシカ

最初の一歩として、部屋にマトリョーシカを置くことにした。

彼はサンクトペテルブルクの街角で購入した、チェブラーシカというアニメのキャラクターをモチーフにしたものだ。

かわいい!と胸が高なり、値段も1000円位と手頃だったので、連れて帰ってきた。

「かわいい!」は実際に口に出したのだが、そのときロシア人の店員さんに「Yes, Kawaii!」と言われてちょっと恥ずかしかった。KawaiiTsunamiやHentaiのように世界共通なのか。

チェブラーシカはロシアの国民的アニメだと思っていたが、店員さん曰く「ロシアではそんなに有名じゃないけど、何故か日本人に人気」らしい。そんなに有名じゃないのか…

買った時は興奮のあまり気にしていなかったのだが、本当のチェブラーシカはこんな見た目だ。

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え、マトリョーシカの絵ちょっと違うんじゃない?というか、ちょっと雑じゃない?

中国の偽ドラえもんに近いものを感じる。なんということだ。私は観光地で浮かれてパチモノを買ってしまったのか。

少し落ち込んだが、「チェブラーシカのインスパイア系」だと思うことで納得した。

気を取り直し、マトリョーシカを分解してみる。

首が取れた!絵面がちょっと怖い。しかし分かっていても、中から人形が出てくると嬉しいものだ。更に開けてみよう。

出てきた!段々と絵が雑になっている気がするが、楽しい。もうひとつ開けよう。

出てきた!え、誰? 誰? 流石にこれ以上は開かないだろう。

そんな予想をあざ笑うかのごとく、更に豆粒のようなマトリョーシカも出てきた。もはや何の絵かわからない。

ここまで小さいものが出てくるとは思わず、お得感に興奮した。

並べてみるとかわいい。部屋が少しロシアに近づいたような気がする。

2. 飾ろう!ソビエトアート

完全にロシア気分になったので、ここで秘密兵器を投入する。

ロシアで買ってきた、ソ連時代のアートポスターだ。ポスターはテーマが色々あり、「ソビエトは最高!」「資本主義に死を!」など激しいテーマが多い。それらも魅力的ではあったが、部屋に飾ったときに共産主義者だと間違われては困る。あまり主張が強くなさそうな「宇宙は我々のもの!」と「悪徳(酒・タバコ)追放!」を購入した。宇宙は普通にかっこいいし、資本主義より酒とタバコの方が悪のイメージとして共感されやすいからだ。

特に、私はソ連時代の宇宙物に憧れがある。先日もロシア映画を観たので、気になる人はチェックしてほしい。

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それではポスターの中からオススメのものを紹介しよう。

まずはこちら。「名声!」

ガガーリンの格好良さと、堂々と掲げたシンボルの危険さがハラハラする。宇宙ポスターと見せかけて、共産主義ポスターだ。ソ連ガガーリンのことが大好きなので、今後もポスターには良く出てくる。

つづけて「平和と進歩の名で!」

タイトルの「平和」にはかなり疑問が残る。宇宙遊泳するガガーリンは平和そうな顔をしているが、ソ連の宇宙開発は平和と無縁な気がする。

そして「遠くまで来たぜ!(意訳)」

申し訳ないが文章が長すぎてGoogle翻訳に入れるのが大変なので、ご容赦願いたい。

ソビエトポスターは陰影の付け方が格好良く、素敵なデザインだ。

次は「名声!」

1枚目とタイトルが被っている。少し名声を主張しすぎではないか。

そしてお気に入りの一枚「共産主義の栄光へ!」

力強いタイトルとは裏腹に、ポーズがとにかく楽しそうで、こちらまでバンザイしたくなる。LINEスタンプとして販売しても使えそうである。

ロケットの格好良さと、共産主義の主張が見事に融合している。このシンボルをここに入れるのか、と感銘を受けた。

これも結構お気に入りだ。ソ連人工衛星はアンテナがたくさん出ていて素敵なのだが、これは月の地名までちゃんと書いてあるのが好印象だ。

これはシャトルの乗員に注目だ。ガガーリンばかり描きがちだと思いきや、最初に宇宙へ進出した犬達をちゃんと描いている。犬もポスターになって光栄だろう。

さあ、これら宇宙ポスターの中から栄えある優勝作品を発表しようと思う。

優勝作品のために、額縁を買ってきて入れることにした。それではご覧いただこう。

ソ連の科学技術の最大勝利」

今まで紹介したポスターの中では比較的地味なデザインであるが、さり気ないデザインが日常に溶け込みやすい。夜、寝る前にソ連の技術に想いを馳せることができる。

落ち着いた絵柄であるが赤い星が盛り込まれており、しっかり打ち上げから始まる衛星軌道も描いてあるのが私のツボを突いた。必要以上に共産主義を主張せず、科学的な描写が味わい深い。

タイトルも「ソ連の勝利!」ではなく、あくまで「科学技術」の勝利なので、ロシア語を読める友人が遊びに来ても安心だ。

つづけて禁酒シリーズもご紹介しよう。

ウォッカがロシアの街を溶かす。目元が虚ろなアル中のおっさんがいい味を出している。私も酔っ払って酒をこぼした時、こんな顔をしていたのだろう。

「パパやめて」 子供に言わせるのは卑怯だ。

これは笑った。一体全体どういうシチュエーションだよ。この表情がたまらない。

酔って街路樹を折り、鉢を蹴倒して… 恥ずかしい!

いくら酔っても街路樹を折ることはないだろう。パワフルな酔い方に笑う。

さあ、いよいよ一位の発表だ。こちらも例によって額縁を購入した。額縁を2つ購入するのは生まれて初めてかもしれない。

一位は、自分への戒めの意を込めて、酒瓶の前に掛けることにした。

「NO!」世界史の教科書とかにも載っている有名な絵だが、シュールでお気に入りだ。きっと楽しくステーキを食べていたであろう彼が、ウォッカを渡されたとたんこの表情である。私がこんな顔で断られたら、泣いてしまうかもしれない。

これから夜一人でお酒を飲むときに、このポスターを眺めて戦意喪失しようと思う。額縁の中の彼は飲みたがっていないのだから。

ロシア料理を味わおう

部屋がロシアに近づいたので、続けて料理を味わいたい。

1. 作ろう!ロシアの朝ごはん

まずは朝食から攻めようと思う。ロシアでは朝食にカーシャというお粥が出てくるので、これを食べたい。

しかしカーシャは蕎麦の実などを煮込んで作るため、難易度が高い。そこで、サンクトペテルブルクのスーパーで買ってきたインスタントカーシャを味わおうと思う。

味には色々なバリエーションがあるが、今回はきのこ味をチョイスした。

お皿に出してみる。コーンフレークの残りカスみたいで頼りない見た目をしている。本当にお粥になるのだろうか?

お湯を注ぎ、待つこと3分。

カーシャが完成した。ほんのりと穀物の甘みが広がり、きのこの風味が漂う。日本では絶対に出てこないタイプの味で、異国情緒が漂う。

ただ、めちゃくちゃ美味しいわけではない。素朴な味だ。

あくまで「朝にカーシャを食べる」という行為が大事なのだ。「スタバでMacbookを広げる」のと同じようなものだ。そう自分に言い聞かせた。

2. 作ろう!巨大ペリメニ

ペリメニというロシアの水餃子がある。

丸っこい形をしているのが特徴で、茹でたものをサワークリームと一緒にいただく。

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モチモトとした食感が大変おいしく、ロシア旅行中には「毎日食べたい!」と思ったものだ。

大抵のペリメニは一口サイズなので、欲を言えばもう少し大きい物を食べてみたい。

しかし、日本でペリメニを食べられる店は多くなく、もちろんスーパーにも売っていない。これは作るしかない!と使命感に駆られ、料理することにした。

まずは具を作る。合挽き肉に刻んだ玉ねぎを加え、塩コショウとニンニクで味をつける。普通の餃子と似ているが、ニラは入れない。

続けて皮を作る。強力粉と薄力粉に水と卵を加えて手でひたすらこねた。

市販の餃子の皮を使うか悩んだのだが、モチモチの食感を大事にしたいと思い、真心込めて生地をこねた。

30分ほど寝かせ、一口大をちぎる。

伸ばし棒(なかったのでサランラップの芯で代用した)で生地を広げ、肉をのせる。

棒をケチったことを後悔した。生地がモチモチを通り越してベタベタしており、あらゆる場所にくっつくのだ。

肉を包む。餃子と違ってひだを作る必要がないので、助かった。

そして、端から丸める。この工程が最重要であり、ペリメニアイデンティティは丸めることで保たれている。

つくったペリメニたちだ。生地が予想以上にベタベタしており作業は困難を極め、歪な形になってしまった。

一つ一つもかなり大きい。果たして無事ペリメニになるのか? ただの「餃子団子」になってしまうのではないか?私は不安に駆られた。

そんな不安を抱きつつ、鍋に一つずつ投入した。

彼らが美味しいペリメニになってくれるのか、ハラハラした。受験生の子を持つ親が控室で待っているときはこんな気分だろうと思う。

待っている間、ロシアンウォッカを注ぐことにした。ツァールスカヤというウォッカで、ロシアのスーパーで購入した。

このウォッカのどこに惹かれたかと言うと…

窓越しにおっさんの顔が見えるのだ。

スーパーで目があった瞬間、「これだ」と確信した。酒越しに絵が見えるギミックは「ワンカップ大関」のそれと似ているが、こちらは距離感をうまく利用している。このまま飾っておきたい。

さて、ペリメニが茹で上がったので水を切り、サワークリームを添えて盛りつけた。

肝心の味は…

ペリメニである。私がロシアで食べたあのペリメニの味がする。完全勝利だ。

嬉しさのあまり、一人でウォッカを乾杯した。ペリメニを一人で独占できる優越感がたまらない。

分厚い皮が最高にモチモチしており、中からは肉汁が出てくる。それがサワークリームと絶妙にマッチしている。

ウォッカも大変おいしく、シンプルな強さのなかにフルーティな旨味がある。

奥にボルシチが写っているが、実はポーランドで買ったインスタント「バルシチ」だ。

独特の薬味の香りが漂い、ボルシチとはまた違う趣がある。

しかし、私はボルシチではなくバルシチで妥協してしまったことに憤りを隠せなかった。もうボルシチも作るしかない。

3. 煮込め!ボルシチ

肉と野菜、そしてサンクトペテルブルクのスーパーで購入したボルシチの素を用意した。

本場のボルシチはビーツがキャベツの千切りのように入っているのだが、日本のスーパーでビーツを手に入れるのは難しい。

スープの素にビーツが入っていると信じ、代わりにキャベツを入れることにした。

まずは肉と野菜を炒める。

続けてボルシチの素を投入した。

全然赤くないことに不安を覚えた。もしかして、ビーツを入れなければ赤くならないのでは…?! 

混ぜると微かに赤くなったような気がするが、思った色と違う。

煮込んだら赤くなりますように… 僅かな希望を鍋に託し、30分見守った。

緊張の面持ちで蓋を開ける。

頼む、ボルシチになっていてくれ。

…赤い!ボルシチになってる!

めちゃくちゃ美味しそうで、涙が頬を伝った。

この後マンションの入り口にあるポストに行ったのだが、外からほんのりボルシチの匂いがして笑った。きっと他の住人もボルシチの匂いを嗅いでいただろう。しかし、これを独占できるのは私だ。優越感に浸り、一人ほくそ笑んだ。

ロシア料理で重要なのは、サワークリームだ。ヨーグルトとチーズの中間みたいな味がするもので、日本では馴染みがないが、これがないとロシア料理とは言えない。

幸い近所のスーパーにサワークリームがあったので、ボルシチに添えることにした。

完成だ。気分を出すためにライ麦パンを添えた。

一口すする。

優しいながらも本格的な味わいが口に広がる。野菜と肉の旨味が溶け出して、サワークリームの酸味が良いアクセントとなっている。

どこか懐かしいような感じがして、不思議な郷愁感を覚えた。私はロシア出身だったのかもしれない。

一気に三日分作ったので、翌日もボルシチを食べたのだが、味の変化に感動した。

カレーと同じ要領で、一晩寝かせることで旨味が更に染み出したのだ。

「カレーとボルシチは寝かせろ」という人生の諺を心に刻んだ。

追記

後日、市販の餃子の皮でペリメニを作った。調理時間が圧倒的に短縮され、見た目も綺麗になった。

しかし、モチモチ感や風味は手作りに及ばないのが残念であった。急いでペリメニを作りたい時は、こちらで妥協したい。

最後に

非日常であったロシアが日常に組み込まれた瞬間、ロシアとの距離がぐっと近くなるのを感じた。

マトリョーシカを眺めながら、朝にカーシャ、昼にペリメニ、夜にボルシチを食らい、ウォッカを飲む。

ふと横を見れば、ソビエトの宇宙開発が描かれている。もう私の心はソ連だ。

私のロシアウィークは幕を閉じたが、これからもロシア料理を作るだろう。

これからも勝手にロシアとの距離を縮め、思い出を煮詰めていきたい。ボルシチのように。