映画「サリュート7」がアツい
先日、飛行機の中で映画「サリュート7」を観た。この映画、「ソビエト版 ゼロ・グラビティ」といった雰囲気で、大変面白かったので紹介する。ネタバレ全開なので、嫌な人は下のリンクからレンタルして欲しい。
PVもあるので、ぜひ見てほしい。このブログで扱う画像は全てこのPVで使われているものだ。
ロシア映画に求めるもの
今までの人生でロシア映画というものを見たことが無かったが、宇宙×ロシア(ソ連)という組み合わせは実にロマンがあって格好良いと思っている。例えば映画ドラえもんを見るときは、泣くスネ夫や男らしいジャイアンといったお決まりの要素を期待すると思うが、私がロシア映画に求める要素は次の通りだ。
- ロシアならではの排他的態度
- 自国を讃える空気
- ウォッカ
この映画は上記3つを満たした素晴らしい映画なので、大変おすすめである。
はじまり
かつてソ連が打ち上げた宇宙ステーション「サリュート7」が突然制御不能になる。大変だ、どうにかしないと地上に落下してしまう。 ソ連の重鎮たちが集まり、出てきた疑惑は…
「アメリカの妨害では?」
この冷戦感がたまらない。ロシアの映画はこうでなくては。
どきどきドッキング
優秀な宇宙飛行士2名を制御不能のサリュート7に送り、頑張って復旧させようという話になった。サリュート7に入る為には手動でドッキングする必要があり、かなりの難易度だ。
サリュート7はクルクルと全方位に回転しており、シャトル内のモニタをみながらタイミングを合わせる必要がある。地上にも緊張が伝わり、皆が息を飲むなかサリュート7へ近づく…
…モニタの中央に結合部を捉えた。このままドッキングできそうだ。少しずつスラスターを吹かせる。
…あと少し、あと少しでドッキングだ
…突然ビープ音が鳴り響き、ドッキング失敗のダイアログが表示された。軌道がズレていたのだ。
このシーンに懐かしいもどかしさを覚えた。あれだ、ゲーセンにある、穴に棒を入れる奴だ。
失敗の報告を受けた地上は落胆と同時に、新たな司令を練りはじめた。シャトルの2人は当然指示を待つかと思いきや…
「いくぜ!」と言わんばかりに突然ドッキングを始めた。私はたまげた。待機司令を鮮やかに無視する漢気に感銘を受けたのだ。
ガチャン、と軽快な音をたてドッキングは無事に成功した。基地の皆は大喜びだ。指令無視して良かったのか?私はモヤモヤした。
潜入!そして炎上
サリュート7は氷に包まれていた。漏れた水が宇宙の冷気に晒されたのだ。予想外の寒さにたじろぐ2人だが、地球から驚愕の指令が飛ぶ。
「ソ連の漢なら冬に強いはずだ」
そんな理屈でいいのか?言葉の力強さにたまげた。まともな別の役員が、気温の危険性を説明し、作業は2日が限界だと力説する。それを受けた司令官は…
「よし、4日やる」
なぜだ。こんなに命令を無視する組織でいいのか?
宇宙に漂う2人は無事ステーションを修理し、熱で氷を溶かすことに成功した。漂う水も空気で飛ばして一箇所に集め、無事に再起動が完了した。
嬉しくなった2人はこっそり持ってきたウォッカで祝杯を挙げた。宙に浮かべた球体のウォッカをすすり、ご満悦だ。
宇宙ステーションでアルコールを浮かべていいのか不安になったが、映画だから大丈夫なのだろうと思っていると…
不謹慎だかちょっと笑ってしまった。完全に自業自得である。
脱出計画
燃えるサリュート7を隔離し、2人は命からがらシャトルへ戻った。しかし新たな問題が浮上する。残りの酸素が少なく、1人しか帰還できないのだ。
地球の司令官はやるせなさで激昂し、椅子を投げてガラスを破壊する。
いや、ミッションの日程を無理に切り詰めたのはお前だろ。お前が怒るんじゃねえよという気持ちに包まれた。
1人での帰還を命じられた乗員は、もう1人を見捨てることは出来ない、と命令を拒否する。2人で船外作業に移り、最後の賭けに出た。サリュート7を修理し、酸素供給システムを回復させるのだ。
そのころ地上ではアメリカがシャトルを打ち上げ、宇宙へ飛び出した。彼らの助けを待てば2人とも帰還できるかもしれない。 そんな期待を裏切るかのように委員会が出した結論は…
「アメリカに技術を奪われるまえにサリュート7を撃ち墜とそう」
どこまでも非常な国である。
修理
船外にでた2人は、修理パネルにアクセスすべく曲がった煙突をハンマーで懸命に叩く。しかし、いくら叩いても壊れる気配がない。
徐々に酸素がなくなり、気温も下がってくる。
叩いても、叩いても、何も変わらない。
もうだめか… と思われた刹那、煙突が外れた。
これで修理ができるが、まだ安心できない。修理はこれからだと思った。
そんな私の不安を嘲笑するかの如くサリュート7は元気に再稼働を始め、無事に酸素が供給されたのだった。
私は唖然とした。そんな力技だけで直るものなのか?!ハンマーで叩いただけでは?!
そんな2人の側をアメリカのシャトルが通り過ぎ、2人は「ソビエトの勝利だ」と言わんばかりの敬礼を見せつけるのだった。おしまい。
いい話のような終わり方をしたが、冷静に考えて欲しい。
勝手にウォッカで炎上し、ドタバタしただけではないのか。
この雰囲気、ツッコミどころはサリュート7でしか味わえない。皆さんもぜひご覧ください。