つなブログ

日々の記録です

カリカリベーコンの作り方を教わりにユタに行った話

ベーコンと私

 人生で忘れられない味がある。

 

8年前、アメリカのユタ州にある家でホームステイした時だ。朝起きると、ホストマザーが朝食を用意してくれていた。アメリカに対する淡い憧れを抱いていた私は、スクランブルエッグにトースト、オレンジジュースという組み合わせに「いかにもアメリカの朝食っぽい…!」と密かな興奮を覚えた。

 

この中でも、私の心に深く刻まれているのは卵に添えられていたベーコンだ。一見するとどこにでもある平凡なベーコンなのだが、一たび口にすると寝起きの頭が肉色になる程の衝撃に襲われた。このベーコン、恐ろしくカリカリなのである。

 

実家で出てくるベーコンは歯ごたえこそあるものの、カリカリというにはほど遠いウェットな触感で、これがベーコンなのだと信じて生きてきた。ベーコン=しっとり という方程式を信じ込んでいた私に訪れたカリカリベーコンは、まさにベーコン界の黒船とも言える存在であり、この日を境に私の中のベーコン観は180度覆ることになる。

 

あの日のベーコンを求めて

ベーコン観に対するコペルニクス的転回ともいえるあの日の出来事が私の朝食生活を変えてしまったことは言うまでもない。帰国して数年後、自炊生活を始めた私はカリカリベーコンを再現しようとキッチンに立った。

 

レシピを調べると、どうやらベーコンを焼くときに砂糖をまぶし、じっくり焼くことでカリカリになるらしい。レシピの通り焼いてみると、確かに砂糖がうまく乗った部分はカリカリになるものの、硬さにムラがありあの日のベーコンには到底及ばない。己の無力さを恥じ、その後も理想のベーコンを求めて日々台所に立った。

 

しかし、いくら焼けどもあの日のベーコンは再現できない。焼き加減が足りずウェットなベーコンができてしまう日があれば、逆に焼きすぎて焦げてしまう日もあった。そう、焼き加減の調節が絶妙に難しいのである。微妙なベーコンを量産する度にアメリカで食べたベーコンが神格化されていく。

 

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当時のカメラに残念ながらベーコンの写真はなかったが、色合いが最もベーコンに近い写真。

 

カリカリベーコン3本の矢

私はカリカリベーコンに対する思いを馳せるあまり、理想のベーコンに求められる三大要素、すなわち「カリカリベーコン3本の矢」を提唱した。

 

1つ目は「ベーコン表面におけるカリカリ部分の均一さ」である。これはベーコン内でカリカリな部分とウェットな部分が共存していることは許されないことを意味している。不均一なカリカリ感は、一口目を食べた時の高揚感から次第に「思ったよりカリカリしてないかも」という落胆へとつながっていくのだ。

 

2つ目は「再現性の高さ」である。ホームステイ中、毎朝出てくるベーコンのカリカリ度は驚くほど常に同じであった。その日のコンディションによってカリカリ度は前後してしまうものだと思うが、常に一定のクオリティを保っていた。

 

3つ目は「驚異的な調理時間の短さ」である。毎朝、いつ調理しているのかわからないくらいの早業で食卓に並ぶ。一体いつ調理したのか。時空を超えてベーコンが出てきたのか。そう思うほど一瞬で料理が出てくるのだ。カリカリ度と早業を両立することの難しさは身に染みて理解している。

 

いざユタへ

一体どんな技を使っているのか、食材が違うのか、裏技があるのか… 謎が謎を呼び、当時レシピを聞かなかったことに対する後悔が募る。どれだけ気になっても、真相はユタの中。一旦忘れようと思いながら日々を過ごすものの、台所に立つと時々心の隅に引っかかりを感じる。

 

そんな気持ちを抱えて迎えた昨年上旬、まとまった休みができた私は一大決心をした。

もう一度、ユタに行こう。いや、行かなければならない。その気持ちが冷めないままFacebookでつながっていたホストマザーに連絡を取り、ついに8年ぶりの再会の約束を交わした。勢いに任せてユタ州ソルトレイクシティ行きのチケットを購入し、日本の手土産と共に飛び立った。

 

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ソルトレイクシティに到着し、ホストファミリーと合流した。

8年ぶりの再会に感動し、近況を語りながら家に向かった。家の様子は8年前の思い出をそのまま切り取ったかのようであったが、私と同じくらいの身長だった子供たちは、もはや上を見上げないと目が合わない。この8年間を振り返ると、色々な変化があった。ベーコンのように波打つ人生を振り返りながら、緩やかなひと時を過ごした。

 

床に就いた私は、どうしても気がかりなことがあった。

そう、翌朝の朝食である。

カリカリベーコンは出てくるのか?

いきなりご飯派になっていないだろうか?

そんな気持ちを抱えながら目を閉じた。

 

再会

翌朝、食卓に並んだ光景に私は息を飲んだ。

 

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スクランブルエッグにトースト、そしてベーコン。思い出のままの朝食だ。

至って普通の朝食だが、私にとってはあの日の思い出も一緒にお皿に乗っている。

湧き上がる感情を押さえ、そっとベーコンをかじった。

 

 

――カリカリだ。絶妙なカリカリだ。

 

私がどう頑張ってもたどり着けなかったカリカリベーコンがそこにある。

8年間追い求めていたカリカリベーコンを食べている。

味、触感、見た目、すべてが8年前の記憶と寸分たがわぬベーコンを前に私は驚きを隠せなかった。

 

明かされるベーコンの秘密

今こそレシピを聞かなければ。

カリカリベーコンに対する思い、どうやって料理しているのか、何かコツはあるのか、拙い英語で精一杯彼女に伝えた。

 

私の熱意と裏腹に、彼女はどこか申し訳なさそうな顔を浮かべ、冷凍庫のドアを開けてそっとパッケージを取り出した。

「Fully Cooked Bacon」

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私は全てを察した。

 

カリカリ部分が均一だった理由。

毎日同じ焼き加減だった理由。

驚くほど速く調理できた理由。

 

ああ、冷凍食品だったんだな。

 

 

8年間追い求めた理想の姿、淡い思い出、そして憧れ―― そんな記憶が冷凍されてコストコで売っている。

 

呆気ない答えに脱力しつつも、長年の謎が解けた爽やかさに包まれた。

これからは、 これをレンジで温めればカリカリのベーコンが作れるのだ。

 

少し切なく、でもどこか懐かしいような、しょっぱい味。

あの日のベーコンは今も心のターンテーブルで回り続けている。

エジプト人に鼻血の止め方を聞く

鼻血を軽視してはならない

皆さんも人生で一度くらい鼻血が出たことはあるだろう。チョコレートを食べ過ぎたり、はしゃぎすぎたり… しかし、皆さんは「なんだ、鼻血か」程度にしか思わないだろう。このような態度を取ることは、鼻血に対して失礼極まりない態度であり、鼻血大明神の逆鱗に触れることになる。決して鼻血を軽視してはならない。深くお辞儀をしながら「お忙しい中ようこそいらっしゃいました、鼻血様」と厳かな態度で向き合い、鼻血大明神に丁重な祈りを捧げるべきである。

 

私が鼻血を恐れるのは、エジプトで鼻血地獄を味わった為である。決して鼻血を軽視するなという戒めを込めてこの記事を執筆することにした。

 

発端

憧れのエジプト旅行が実現した私は、鼻の奥から湧き上がる喜びを抑えきれなかった。乾燥した空気と、堂々とそびえたつピラミッドが私の血を沸かせた。特に、ピラミッドを3つ同時に見れるこの場所では「同時に3つも見ていいのか?!」とお得感に打ちひしがれた。

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こんな素敵な場所に来れば、ウキウキしてしまうものだ。私は存分にウキウキすることにした。

 

フォ~~~~~~~~~~~~!!!

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イェェェエ~~~~~~~~~~~イ!

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ヤッホ~~~~~~~~~~~~~~イ!

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今から思い起こせば、神聖なピラミッドの前で全力のウキウキを披露したのが間違いであった。鉄の匂いと、氷のような感触に包まれ、私の顔は真紅の液体で染まっていた。鼻血だ。

 

この時鼻血を丁重にお迎えしていれば事態は悪化しなかっただろうが、私は鼻血を軽視していた。適当に詰め物をしていれば、そのうち固まるだろう、と。

 

鼻に詰め物をした私は、更に溢れるウキウキを爆発させた。

 

うぉおおおおおおおおおおおおおおおお

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鼻血なんて知るか~~~~~~~~~~~

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この行為が鼻血大明神の逆鱗に触れたのは言うまでもない。私の鼻血は止まる気配がなく、力強く鼻の奥深くから流れ出し、幾多のティッシュを真紅に染め上げた。

 

止まらない鼻血

太陽の船」の展示にたどり着いた時、私の鼻血は頂点に達した。何度ティッシュを詰めても、溢れる鼻血が止まらないのだ。展示に目もくれず、トイレに駆け込んだ私は洗面台に鼻血を垂れ流した。

 

エジプトのトイレ事情を説明しておこう。エジプトの観光地でトイレに行くと、基本的にチップが必要である。チップを回収するためにトイレの前には「番人」が常駐しており、チップなしでトイレを使おうとすると引っ張られる。

 

郷に入れば郷に従えというので、快くチップを払うつもりであったが、鼻血が酷すぎてそれどころではない。番人のおばちゃんも血まみれの私を見て察したのか、何も言わず通してくれた。ひたすら血を流していると、彼女はエジプト流止血法を伝授してくれた。「上を向いて、鼻の付け根を手で押させなさい。」どうやら止血法は世界共通のようだ。

 

おばちゃんに従い上を向いていた私だが、血が口の中に溢れてくる。洗面台に血を吐き、血まみれの手を洗う。そんなことを繰り返すうちに、おばちゃんが次の手を打った。

 

「救急車呼んだわ」

 

冗談ではない。鼻血で救急車を呼ばれるなんて、前代未聞だ。海外での治療はお金もかかるので、こんな事態は避けたかった。しかし、もう為す術もないので、諦めて鼻を押さえた。

 

しばらくすると、肩に蛇のマークが入った救急隊員がやってきた。もっと緊急の人もいるだろうに、迷惑をかけている申し訳無さで一杯だった。事情を話すと、隊員は「えっ… 鼻血?」みたいな顔をしながら止血法を伝授してくれた。「上を向いて、鼻の付け根を手で押させなさい。」そう告げると彼は去っていった。

 

その後も鼻血はドクドクと流れ続け、私の顔には肥沃な三日月地帯が形成された。河の周りでは農耕が発達し、運河が完成した。人々の生活は潤い、恵みをもたらした鼻血大明神に祈りを捧げ、ピラミッドを建築した。鼻血万歳!

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街の中でも鼻血

一刻も早くホテルに帰りたかったが、団体ツアーで参加していたため、やむを得ずバスでメンフィスへ移動した。バスの中で休憩したかったが、運転手がどこかに行ってしまった。仕方なく、トイレで顔を洗うことにした。

 

このトイレにも番人がいたが、私が鼻を抑えていると心配しながら中に入れてくれた。彼は丁寧にも、鼻の詰め物の折り方を伝授してくれた。折り紙のように複雑な手順で、これがエジプト流の折り方か… と感心した。正直よく分からなかったので、適当に丸めて鼻に詰めた。

 

バスの前にある椅子に腰掛け、鼻を抑えていると見知らぬエジプト人がいきなりバナナを差し出してきた。

 

「大丈夫?これ、サービス!」

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意味がわからない。どう考えてもバナナを食べている場合ではない。鼻血が出ているときにバナナを勧められたことは人生初である。しかも、ご丁寧にバナナを剥いて渡されたため、もう食べるしか無い。彼はどういう気持でバナナを勧めたのだろう。私が知らなかっただけで、鼻血にバナナが効くのだろうか?バナナの皮を鼻に詰めればよかったのだろうか?謎は深まるばかりだ。

 

帰国後も鼻血

血まみれの旅行となってしまったが、帰国後も2周間程鼻血が続いた。なぜこれほどまでに鼻血が出たのか。一説によると、「ピラミッドの呪い」と「鼻血大明神の怒り」が融合して鼻に大災害をもたらしたと言われている。皆さんは、くれぐれも鼻血を軽視しないで頂きたい。

 

エジプトで鼻血を出すと、下記のような処置を施される。エジプトに行くときは参考にして欲しい。

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twitterはじめました(2回目)

海外旅行中のSIMでtwitterアカウントを作ったら、アカウントのロック解除ができなくなってしまいました…
皆さんは国内の番号で作りましょう(反省)

 

という訳で、こちらのアカウント(@27blog)をよろしくおねがいします。

記事の紹介などを投稿する予定ですので、気に入ったものがあればシェアして頂けると嬉しいです。

 

Twitter始めました

こちらのアカウントはロックされてしまったので、新アカウント(@27blog)のフォローよろしくおねがいします。

宣伝用のTwitterアカウントを作りました! 気に入ればシェアして頂けると嬉しいです

チュートリアルおじさんと私

私は確信した。この世界には初心者用チュートリアルを担当するおじさんが居ると。

チュートリアルおじさんは、ただ親切なおじさんではない。妙に説明的で、何の脈絡もなく初歩的なアドバイスを提供してくれるおじさんだ。

あれはポーランドバーガーキングでレジに並んでいた時のことであった。背の高いおじさんが突然振り返り、スマホを見せながら私に囁いた。

「知ってるか?バーガーキングのアプリを使えば安くなるんだ」

唐突にアドバイスされた私は、困惑のあまりアプリをインストールする暇もなく会計を済ませてしまった。おじさんは、そんな私を気にかける様子もなく、ただ静かにバーガーを持って去った。一体何故このタイミングで割引の事を教えてくれたのか?安くないバーガーを齧りながら、私はおじさんの背中を思い描いた。

同国の市バスに乗った時、年配のおじさんと目があった。

「今日は特別な日だからバスの券は要らないんだ」

そのころ別行動していた友人がバスに乗った時、おじさんに話しかけられたという。

「今日は特別な日だからバスは無料なんだ」

何という事だ。このメッセージを告げるおじさんが意図的に配置されていたとしか考えられない。

また友人によると、博物館で展示を見ている時いきなり「歴史を学びたいなら本を読んだ方がいいぞ」と伝えるおじさんに遭遇したそうだ。この辺りから、街でおじさんを見るたびにチュートリアルが飛び出すのでは?という気持ちが膨らんできた。

しかし、チュートリアルおじさんは初心者の前にだけ現れる。街に慣れてきた私の前に、彼らの姿が現れる事はなかった。

チュートリアルおじさんは、初めての街に出没する。初めてギリシャの地下鉄に乗った時、路線図を見ながら何気なく目的の駅を口走ると、若いおじさんが嬉々として私に話しかけてきた。

「その駅は2つ目の駅でレッドラインに乗り換えるんだ。電車を降りたら右だぞ」

また初心者に戻れた。初めて見るおじさんなのに、どこか懐かしかった。

オーストラリアに行った時は、チュートリアルお姉さんに遭遇した。

バスの中、現地のSIMカードスマホに挿していると、居合わせたお姉さんがドコモショップ並みの丁寧さでセットアップ方法を指南し、にこやかに去って行った。

彼らは一体何者なのか。本当に存在したのだろうか。今となっては知る由も無いが、今日も世界のどこかでおじさん達はチュートリアルを繰り広げている。

デルフォイで神託を受ける

神託を受けたい

 人生、アドバイスを貰いたい時が多い。先生や友人に貰うアドバイスも貴重だが、初詣で引いたおみくじに書いてあるアドバイスは特に重要な気がしないだろうか?

 

昔の偉い人もアドバイスを貰いたい時が沢山あった。例えば戦をする時、攻めて良いのか不安だったりする。そういう時に神のお告げを受けることで、安心して戦に臨めるというわけだ。神からのお告げを神託といい、国レベルの大切な決断から個人的な引っ越しの相談まで幅広く対応する神託界の大御所が、ギリシャにあるデルフォイだ。

 

私も、デルフォイで神託を受けたい!

 

今回の記事では、私が神託を受ける過程と、美しいギリシア世界をご紹介しようと思う。 

アテネで大興奮

 デルフォイに行く前に、まずはアテネを観光することにした。他の神殿で肩慣らしをしようという魂胆である。

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これは、ギリシャで一番有名だと思うパルテノン神殿だ。アクロポリスの丘という小高い場所にあり、街を一望できる。

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 高校の時世界史で習ったのだが、古代ギリシアの都市には「アゴラ」と呼ばれる広場が存在し、人々の交流の場となっていた。当時このアゴラという言葉が妙に頭に残り、私の頭の容量が圧迫され、センター試験で大変苦しい思いをした。そんなアゴラであるが、一体全体どれほどの広さなのか検討も付かず、積年の疑問であった。今回の旅行では、そんな生アゴラに足を運ぶ事ができ、感慨無量である。

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これがアゴラだ。思ったより広い。建物は殆ど原型をとどめていないが、当時は賑わっていたのだろうと想いを馳せて散歩した。

アゴラ内の博物館では、面白い展示を閲覧できた。

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これはオストラコン。追放したい人の名前を刻んで投票するのに使われた。自分の名前が書かれている陶片が何世紀も展示されると思うと可哀想である。

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この謎マシンが一番ワクワクした。異様な風貌をしたこのマシンは、古代の抽選機だ。身分証を横長の穴に挿しておき、左の丸い部分から玉を順に出していく。各行ごとに玉を出し、当たりが出た行の人物が陪審員に指定されるという仕組みだ。抽選する人も、ビンゴ大会気分でウキウキだっただろう。

 

こんな昔から数十連ガチャが存在していることに感銘を受け、また同時に「こんな大層な物を作らなくても、紙のクジを引けば良いのでは?」と思った。

 

ちなみに、アクロポリスアゴラ周辺は店が立ち並び、非常に賑やかである。現代のアゴラもしっかりと経済の中心になっている。

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 さて、私がアゴラに来たら絶対にやろうと思っていたことを披露する時間がきたようだ。それではご覧いただこう。

 

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 アゴラで、アグラ

 

 

 

 突然の寒いダジャレにショックを受けた読者の為に、秘蔵の猫コレクションを用意したので落ち着いて欲しい。

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いざ神託を受ける

 いよいよ本題の神託を受ける時が来た。私の調査によると、次の手順で神託を受けることが出来る。今後神託を受ける人は参考にして欲しい。

  1. 生贄を捧げる
  2. 巫女が地割れから吹き出すガスを浴びる
  3. トランス状態の巫女から言葉を受け取る

 

なんということだ。全ての手順があまりにも難しすぎる。生贄も巫女もガスも用意することができない。このままでは神託を受けることができないではないか!私は憤怒した。

 

ホテルで慎重な検討を重ねた結果、下記の代替案で神託を受けることにした。

  1. 生贄を捧げると警備員に怒られる可能性が高いので、入場料を収める
  2. 巫女の代わりにガイドのおばさんを雇う
  3. 神殿で祈り、その晩に見た夢を神託とする

夢は古来より重要な意味を持つと考えられているため、我ながら妥当な手段だと思う。

 

 デルフォイアテネから車で数時間の場所にあり、パルナッソス山に囲まれている。いざ到着すると、あまりの神々しさに言葉を失った。

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雲の間から光が差し、後ろには雄大な山が広がっている。こんな場所ならオリンポスの神々も快適に暮らせる。

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神託を受けるにあたり、何を質問するか非常に悩ましかった。ギリシャの神々に質問するに足るような質問にするべきだ。散々悩んだ挙げ句、「私はどう生きればいいか」と聞くことにした。

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そしてアポロン神殿に祈りを捧げた。生贄も巫女も用意出来なかったことを詫び、夢でアドバイスを頂けるよう切実にお願いした。

 

 デルポイからホテルに帰った私は、緊張の面持ちでベッドに転がった。静かに目を閉じ、今日の出来事をぼんやりと回想しながら眠りについた。

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その晩、4つの奇妙な夢を見た。朝に書いた手記を使って私の夢を順番に紹介し、アポロン神からのメッセージを読み解こうと思う。

 

高校で受験後に社会を受けたが、難しすぎてやめたくなった。しかし、それでも続けてみたらいいかも(原文ママ

  本記事の最初の方でも書いたように、私は世界史があまり得意ではなく、受験においては劣等感を覚えていた。無意識に抑圧されていた気持ちが、この旅行をきっかけに呼び起こされ、当時の苦い思い出が夢に出たのだろう。しかし、後半では「それでも続けてみたらいい」と前向きな気持ちを示している。正直受験勉強を続けたいと思ったことは無く、そのような夢を見ることは意外であった。きっとこの部分が教訓であり、「困難に立ち向かうことが大切である」と説いているのだろう。

 

 ツイッターが凍結された

 朝起きた時はあまりのしょうもなさに愕然としたが、冷静に読み解いてゆきたい。私がツイッターを使う時、自分を披露したい自己顕示欲と、他のユーザーからの「いいね」を欲する承認欲求に支配されている。フロイトによると全ての夢は願望充実のために見るとされており、この場合も私の欲が現れたのだろう。そんなツイッターのアカウントが凍結された夢を観た時、破滅に近い感情を味わった。すなわち、「強欲は破滅へ繋がる」と説いているのだろう。

 

入社式に遅れた

 これから社会人になるという時期にこんな夢を見て、その不吉さに戦慄した。そのまま受け取ると「遅刻に注意せよ」であるが、自分にとって入社式とはモラトリアム終了の象徴であり、大きな不安を抱いている。そのようなストレスに対処し、遅くてもいいので社会に出ろ、つまり「気持ちの切り替えを焦るな」というメッセージかもしれない。

 

言うことを聞かない蛇に激怒し、口論した。その蛇は干上がった。

 これが一番意味深長で、一見すると意味不明であるが、後味の悪い夢であった。夢に登場する蛇は、古来より神の使いや縁起の良いもの、権力の象徴、卑猥なものの象徴など様々な解釈がなされている。蛇との戦いといえば、ギリシャ神話でヘラクレスが蛇の怪物ヒュドラ(Hydra)と対決した話が有名である。ヒュドラは沢山の頭を持つ蛇で、頭を切っても再生してしまう。そのためヘラクレスは断面を焼くなどして倒した。私は、夢に出てきた蛇はこのヒュドラではないかと考える。上で猫の写真を載せたが、その写真を撮った場所はイドラ(Hydra)島であった。よく見ると後ろの垂れ幕にもHydraと書いてある。

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更に、蛇が干上がるという内容も蛇がヒュドラであることの妥当性を示している。「乾燥」を表す英語は "dehydrate"であり、"hydra"を含んでいる。このような連想が夢にヒュドラを生み出したのだろう。

 

さて、ヘラクレスの戦いと私の夢で異なる点は、倒し方である。私は一切物理的な攻撃を加えず、言葉のみで戦った。今までの数年間を振り返ると、言葉によって大きく傷つき、また人を傷つけてしまったことが想起される。ヒュドラには言葉という武器で勝利したが、なんとも後味の悪い気持ちになった。したがって、私がこの夢から得た教訓は「言葉の重みを知れ」である。

 

総括

Q. 「私はどう生きればいいか?」

A.

  • 困難に立ち向かうことが大切である
  • 強欲は破滅へ繋がる
  • 気持ちの切り替えを焦るな
  • 言葉の重みを知れ

 

 これが本当に神託なのかは神のみぞ知る事であるが、ミステリアスな旅を楽しむことができた。みなさんも、重要な決断をするときにはデルフォイに赴くことを検討して頂ければ幸いである。

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ギリシャ料理「ムサカ」はジャンキーで美味しかったが、量が多すぎた。

 

空港でTOEFLみたいな会話をする

前回の記事で、「次回はギリシャ編」と書いたが、トランジットが暇すぎるので別の記事を書くことにした。

エジプト航空

飛行機の扉が開くと、足元に細かい砂が雪崩の如く流れてきた。薄暗い通路の奥からは不気味な風が吹いてくる。私は松明を片手にゆっくりと1歩ずつ足を進めた。刹那、カチリと不吉な音と同時が響き渡った。危険を察した私は咄嗟に這い蹲り、頭上を毒矢がかすめた。そのまま這うように進んでいくと、座席には溢れんばかりの金貨や腕輪、そして目を奪うほど美しい宝石が散りばめられていた。思わず笑みをこぼし、宝石を手に取ると、背筋を嫌な冷気が伝った。振り返ると、そこには呪われしミイラが────

以上が、私がエジプト航空で予想していた内容である。それでは実際の写真をご覧いただこう。

流砂も罠もミイラも居ない、いたって普通の航空機だ。機内エンターテインメントも装備している。

いや、「世界の映画」以外はコメディーなのかよ。どんな世界観だ。

そして、世界の映画のサブカテゴリはこちらだ。

いや、また「コメディー」あるのかよ。コメディー好きすぎるだろ。コメディー映画を見てほしいエジプト航空の気持ちを無視して、私はミッションインポッシブルを観た。

その祟りか、飛行機は乱気流でガタガタと揺れまくり、システムも再起動してしまった。メモリーが493MBしかない。

機内で配られるアメニティは結構充実しており、アイマスクや歯ブラシ、ボールペンなど一通り揃っていて嬉しかった。入れ物も、筆箱として使えそうである。

機内食は平均的な味だが、和風テイストだった。日本発の便だからだろう。

カイロ空港

トランジットの為、カイロ空港へ着いた。次の便まで5時間程暇を潰さなければならない。まあネットサーフィンでもするか、と思ったのだが…

Wifiが有料!!一応最初の30分だけ無料で使えるが、それもSMSで認証する必要があるので、実質使えない。認証なしで爆速インターネットが使える仁川国際空港の爪の垢を煎じて飲んで欲しい。時間を無駄に使うのは得意なので、椅子で本でも読んでいた。

暫くすると中国人のツアー団体がやってきて、リーダーが私の隣に腰かけた。広東省出身28歳の彼と40分位は話しただろうか。最初は世界の国々について話していたのだが、最後の方は日本の独身率の高さや老後の人生設計について語り合う羽目になった。こんな英会話をするのはTOEFL位である。因みに彼のお気に入りの国は日本で、治安の良さと食べ物が気に入ったそうだ。ワーストは南アフリカで、ヨーロッパ諸国も治安悪いから嫌いらしい。私がこれから訪れるギリシャも、「歴史興味無かったら見所なくて面白くないよ」と一蹴されてしまった。ツアーガイドなのに本音を言いすぎだろう。

再见

カイロからアテネへの飛行機でマップを表示すると、メッカの方向がわかるコンパスが表示されて面白かった。

さて、飛行機の窓から地中海の島々が見えてきた。次回こそギリシャ編をお届けするので乞うご期待。